国立研究開発法人国立長寿医療研究センター|認知症臨床研究・治験ネットワーク|愛知県/大府市

認知症臨床研究・治験ネットワーク

認知症の治療

 アルツハイマー病では軽度から高度までのすべての段階で塩酸ドネぺジル ( 商品名アリセプト ) という薬が使われます。 アルツハイマー病では脳内のアセチルコリンという物質が減少することがわかっていますが、この薬はアセチルコリンを分解する酵素を阻害することでアセチルコリンの減少を抑え、1 ~ 3年記憶力低下を遅らせる効果があります。

 中等度から重度のアルツハイマー病の治療薬として2011年、6月から使用できるようになったのがメマンチン ( 商品名メマリー ) という薬です。 アリセプトとメマリーの併用療法も効果があると言われています。

 また、2011年3月にガランタミン ( 商品名レミニール )、2011年7月に貼るタイプのリバスチグミン ( 商品名イクセロンパッチ、リバスタッチパッチ ) が相次いで発売されています。 いずれの薬もアリセプトと同等な効果があると言われています。

 認知症の人には中核症状に加え、抑うつ、幻覚、妄想、徘徊といった行動 ・ 心理症状 ( BPSD ) を伴うことがあります。 不穏、妄想、興奮にリスペリドン ( 商品名リスパダール ) やクエチアピン ( 商品名セロクエル )、オランザピン ( 商品名ジプレキサ ) といった非定型抗精神病薬を使用することがあります。 ただし、保険適応外です。 バルプロ酸 ( 商品名デパケン )、カルバマゼピン ( 商品名テグレトール ) といった抗てんかん薬や、漢方薬 ( 抑肝散 ) を使用することもあります。

 脳血管性認知症の治療では、脳循環改善薬が意欲低下に有用な場合があります。 また脳血管性認知症のBPSDには塩酸チアプリド ( 商品名グラマリール ) を使用することがあります。 なによりも脳血管障害の再発を予防することが重要であり、血栓が作られることを予防するために抗凝固薬 ( ワーファリン ) や抗血小板薬 ( 商品名バイアスピリン、プラビックスなど ) を用いたり、高血圧や糖尿病のコントロールを行います。

 レビー小体型認知症においても、アルツハイマー病治療薬である、アセチルコリン分解酵素阻害薬が有効といわれています。 レビー小体型認知症では、パーキンソン症状を有することがあることに加えて、抗精神病薬に過敏反応を示すことがあるため、BPSDの治療としては非定型抗精神病薬が使いにくく、抗てんかん薬や抑肝散を代替的に使用します。

 非薬物療法も行われており、回想法、リアリティオリエンテーション、音楽療法といった治療法が試みられています。 個々の例では有用性があるようですがまだデータが乏しく、方法が確定していないとも言われています。

 このようにさまざまな薬を単独、あるいは組み合わせて使用し、認知症の人の活動性を低下させないように注意しながらコントロールしていきます。 しかし、一般に高齢者では副作用が現れやすく、薬の種類や量が合わないとかえって症状を悪化させてしまうことがあるので注意が必要です。 また軽度の認知症の人でも、薬を自分で管理して飲むということが難しくなるため、認知症と診断された時は介護者の人に全面的に薬の管理をしていただくことが望まれます。